【被虐のノエル】明日を笑うレモンキャンディ【リベリオ】
第1章 明日を笑うレモンキャンディ
──夜の9時。
書類を纏め、気がつけばこんな時間。お腹が鳴り夕飯を食べ忘れた事を思い出した。何か食べるものあったっけ、こんな時間じゃお店もやっていないだろう、と自室から食べられるものを寄せ集めて給湯室で支度をする。
明日買い出しに行こう、絶対に行こう。主食になり得るものはなくて、クッキーやチョコレートといった甘いお菓子ばかりが部屋にあった。栄養価というよりもこれはカロリーしかない。
インスタントのスープも無い、出来るのはコーヒーや紅茶、ココア等。
この際だ、良く眠れるようにココアでも作ってやる、と鍋にミルクを少量入れて温めていく。本当は肉とかパンとかしっかりと食べたかった、このメニューは塩気のあるものが何一つ無い。
静かだなぁ……、とコンロの火をぼうっと見ているとドアの向こうからこちらへと足音が近付いてくる。
こんな時間に誰だろう、総隊長だったら嫌だなぁ、散々さっきまで書面に並んだ名前だし、しかもあの人狭い給湯室でも煙草吸うからなぁ。
少量のミルクがやや沸騰してきて、小さな泡が湧き始めてきた所でガチャリとドアを開けたのは、総隊長ではなく。
「あ?なんだか」
『お疲れ様です、ストラーダ少尉』
若くして少尉という立場にある、ストラーダ少尉だった。
19歳でそんな立場になった理由は私も知っている。それでも、私よりも2つ若い彼は才能もありきっちりと隊を纏め、仕事をこなしている彼には憧れと若干の嫉妬があった。そして、顔が良くてつい遠巻きから見てしまうという事も。額の傷もチャームポイントだ。きっとやんちゃした時につけたんだろう。前髪のちょっとしたハネも可愛らしい。
そんな少尉が真っ直ぐに私の横に来て腕を組んで無言で見ている。