第9章 chapter9
接戦の末 烏野は音駒をくだした
昔から遊んでいた友達のように健闘した相手を労り合う
涙が止まらない
多分敵も味方もなく、その場にいた全員が素晴らしい試合をした両チームに拍手を送っていた
「まだもう一試合あるし、僕たちはお昼食べに出るけど、どうする?」
お兄さんが聞いてくれたけど、冴子姉さんが後ろから
「お昼買ってきてあげるから蛍に会いに行きなよ、たまらんでしょ」
と言ってくれたので、一礼して蛍くんの元に走った
疲れてるかもしれないし迷惑かもしれないけど、一目だけ近くで見たい
階段を駆け降り、烏野がはけていった方に進んでいく
はっ!!!!
私は何とみんなの正面に飛び出してしまった
「わっ!」
「歩…」
「ちょ、ごめんなさい!こんな所に出てくるつもりじゃ…」
「2人にしてやるべ!みんな撤収〜!月島も次あるから程々にな」
菅原さんが気を利かして2人にしてくれた
全国のバレー部員が行き交う喧騒の中だけど。
「来てくれたんだね」
「カッコ良すぎて死ぬかと思った」
「そーゆーこと外で言わないの」
照れ臭そうにしている彼を抱きしめたいけど、理性で踏みとどまった。
「ほんとにほんとにいい試合だった、私…
涙が溢れて言葉にならない
「ちょっと、僕が泣かしてるみたい…
「ワーーー!ツッキーが女の子泣かしてる!」
顔を上げると音駒の師匠が近づいてくる
「ほらもう…」
師匠は蛍くんの肩に手を回すと
「なんですか?ツッキーは勝者の余裕ですか?こんなとこで女の子とイチャコラして、お前いい加減にしろよ」
蛍くんは嫌そうな顔をして何も言わない
「君もしかして歩ちゃん?いや実はサァームラから連絡きてたんだよね、ツッキーに彼女が出来たって」
「は?なんのために?」
「主将ズの連絡網甘く見んなよ、てめぇ師匠に断りもなくこんな可愛い彼女作りやがって。こんなとこに女連れてきてんのは大将君とお前くらいだぞ」
「歩いこ…」
蛍くんは私の手を取って歩き出す
「今度ちゃんと紹介しろよ!ちなみに木兎も知ってるからな!後で絡まれろ!」
私が
「師匠、蛍くんがお世話になりました!ありがとうございます」
と言うと笑いながら手を振ってくれた