第9章 chapter9
会場に着くと、もう両チームはコートに入っていた
「お兄さん!走ってください!あっちです!」
「歩ちゃん!足速すぎ!待ってー!」
烏野の応援団の元に行くと猫目の姉御と目があった
「おそいよ!その上女ヅレとは…」
「ごめんごめん、仕事が長引いて!で、これは俺の彼女じゃなくて蛍の彼女」
「えーーー!蛍の彼女?!アイツほんと隅に置けない男だね!さ、さ、彼女名前は?」
「あ、橘歩です」
「おーけー歩 彼氏のかっこいいとこ、しっかり見てやんなよ!」
そう言うと猫目の姉御はソーレ!と大きな掛け声を掛け、和太鼓を打ち始めた
か、か、かっこよすぎる!誰この姉御!
私が固まっていると蛍くんのお兄さんが
「あれは冴子さんって言って、烏野の2年のあの坊主頭見える?田中君って言うんだけどそのお姉さんだよ」
「ほぇー冴子姉さん…」
て、違う違う!今はコートの蛍くんに集中
目に焼き付けよう、蛍くんが私に見せたいと思ってくれたこの試合を…
序盤から激しいラリー
ピンチサーバーで山口君が出てくる
蛍くんはあまり友達の話をしないけど、山口君の名前はよく聞く
きっとずっと仲良しだったんだろうな…
前の好きだった子は小さくて可愛かった件は許してないけど!
山口君のサーブがサービスエースを奪う
盛り上がる烏野
予選の時より全然うまい
次も山口君のサーブ
上がった!打たれる…
と、そこに蛍くんのブロック
「サーブで崩してブロックで仕留める、この形が本番で出来たらいいんだけどね」
バレーの話してた時いつだったか蛍くんが言ってた
これじゃん
ブワッと鳥肌が立つ
信頼する仲間がいないと成り立たないプレー
開始数分で涙が溢れる
横を見るとお兄さんも涙目
「忠なんてこんなちっちゃい頃から知ってるから、大きくなって…」
「カッコ良すぎて無理です!」
私が言うと冴子姉さんがクスリと笑って
「そーなんだよ!ウチの野郎どもはね!どいつもこいつもカッコ良すぎんだよ!いくぞー!」
そう言って太鼓を鳴らした