第9章 chapter9
春高2日目の夜
蛍くんからの連絡
『勝ったよ
明日気をつけてきてね
歩がくれたハンドクリーム塗って寝る』
県予選でもあんなにすごかったのに
全国にいけば強いチームがもっといる
青城のためにもしっかり見たい
でもやっぱり
蛍くんに会える
ユニフォームの蛍くんが見られる
その気持ちが大部分を占めていた
ー次の日
「歩ちゃん!ごめんね遅くなって!仕事が長引いちゃって」
蛍くんのお兄さんが迎えにきてくれた
「すいません、お邪魔します」
お兄さんの車に乗り込む
「蛍に、くれぐれも安全運転でって言われてるし、朝からも安全運転だけのライン来てたし、怖すぎるから安全運転で行くね」
「お願いします」
お兄さんは蛍くんと違って饒舌な人で、沢山話をしてくれた
私が知らない蛍くんを全て知ってる人
生まれた時から知ってる人
「最近の蛍は楽しそうだよ」
「そうですか?」
「歩ちゃんとバレーと仲間のおかげかな?」
「?」
「今日の対戦相手、聞いた?」
「はい、何回も練習試合した音駒ってとこだって」
「多分蛍は二日目勝ったら音駒と当たるって分かってたんだと思う。で、この試合を見せたくて歩ちゃんを三日目に呼んだんじゃないかな?」
「蛍くんにとって音駒は特別ですか?」
「そりゃもう…音駒との合宿の前と後じゃ、アイツ全然違うやつになってたからね。蛍はもっと冷めてて、バレーなんて別にただの部活って感じだった。まぁ俺のせいでもあるんだけどね」
「私が春高の予選で蛍くんを見た時は、全然そんな風に思いませんでした。ブロックにも迫力があったし、冷静でよくボールが見えてたし、なにより…途中ケガで交代した時の悔しそうな顔」
「そう、そんな風に蛍を変えてくれた師匠?みたいな人が音駒にいるみたいなんだよね」
「へー…じゃあ今の蛍くんがいるのは、その人たちのおかげですね!感謝したいです!私バレーしてる蛍くんが好きですから」
「俺も感謝してる、それまでの蛍の俺に対する態度とかなんかもう…思い出すだけでもつらいような」
「そうなんですか?!意外です!めちゃくちゃ仲良し兄弟かと思ってました。少なくとも蛍くんはお兄さんのこと好きですよ」
お兄さんは照れ臭そうに笑った