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【鬼滅の刃】杏の枝 ♦ 短編 / R18 ♦

第2章 例のあの部屋シリーズ② 冨岡義勇の場合


「顔だけは派手に美しいのに。んー、勿体ない」

ペロリと舌なめずりをしてしまう。
馬乗りになり、上から見下ろすその情景はあまりにも扇情的で、涎が出てしまいそうになった。

「こんな事をして何になる?」

「この部屋から出られるわよ」

馬乗りになったまま、女は上半身の衣服を脱ぎ捨て、にこっと口角をあげた。

「あらためまして、元水柱さま。宇髄さまの弟子、このがお相手させて頂きます」


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時を遡ること半日、そろそろ日が高くなってきたお昼時に、冨岡義勇はこの屋敷を訪れていた。

「お!来たか!いい加減、地味に入ってくるなよな」

屋敷の入口に立つ背の高い派手な男、同じ元柱で同僚でもある宇髄天元だ。

「すまない。世話になるな」

「なあに、構わないって。それに顔だけは派手に綺麗だからな。嫁も喜ぶんだ」

「?」

何を喜ぶのかさっぱりわからなかったが、それを聞くこともなく、扉を潜り、いつもの様に居間へと通される。

「あら、いらっしゃい!ちょうどご飯ができたところなの」

「…………」

黒髪を纏めた艶やかな雰囲気のその女性に、なんとなくぺこりと頭を下げ、いつも座る位置に腰を落とす。彼女は宇随の嫁のひとり、雛鶴だった。3人の妻のうち、彼女がいちばん接しやすい雰囲気をもっていた。

てきぱきと配膳をこなし、あっという間に昼食の準備が整っていく様を眺めるのが、義勇は好きだった。

「よう、相変わらず派手な顔してんな!その髪も地味だけど似合ってるじゃねえか」

大柄な男が義勇の横にどしっと座り、挨拶とばかりに酒の杯をふたつ持ってきた。そう、この館の主人でもある、元音柱、宇髄天元その人だ。

「短い方が何かと便利だ」

右手を失って以来、生活はがらりと変わった。以前なら長い方が結うだけで簡単だと思っていた髪も、自分ひとりだと結ぶ事すらままならない。

「そりゃそうだな!ほら、派手に飲めよ」

杯をひとつ、こちらに渡す。それを受け取ると宇髄は酒を注いできた。それをちみり、ちみり、と舐めるようにゆっくりと味わう。

「……相変わらず辛気くさい飲み方するなぁ」

豪快に、一気に杯の酒を流し込むと宇随は続けた。
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