第10章 夢のあと
階下へ降りるエレベーターが閉まる寸前
アランは手を差し込んだ
センサーが反応して
ドアが開く
俯いているリンの腕を掴んでエレベーターの外に出すと
アランは言った
「……リン……顔と名前を変えてるけどアイツは…」
『…分かってる…』
「……っ…」
アランは
人形のように表情を無くしたリンの瞳を覗いた
口を開いたのはリンだった
『………アラン……行かせて…?』
「……」
『……"強くなれ"…って……セツナは言った………だから10年間…何とかやってみたよ……でも…私は……1人きりじゃ強くなんてなれない…』
そう言ったリンの身体を
アランは抱きしめた
「……リン………俺じゃ…ダメか…?………俺は……昔からずっとオマエの事を……」
アランの腕の中で
リンは静かな声で言った
『………ありがとう…アラン……私も小さい頃からずっとアナタが好きだった………………でも………私が愛したのは……セツナだけなの…』
顔を上げたリンは
優しく微笑んでいた
「………リン……」
『…………お願い……………セツナに会いたいの……』
腕の中を離れ
歩き出すリンの後ろ姿を
アランは見つめていた
そして
彼女を乗せたエレベーターのドアが
静かに閉まった