第4章 stray cat
リンに似た少女が
" 暁辰会 "と対立するマフィアの縄張りで男達に囲まれて歩いている所を見た人物がいるという情報を教えてくれたのは
亮二の息子のアランだった
14歳という若さで
移民の少年達と作った組織" 刄鬽亂[バビロン]"の頂点についていたアランは
独自のネットワークを持っていた
リンが男達に繁華街の裏通りにあるライブハウスへ連れ込まれる所を見たという情報を得たアランは
セツナに連絡し、店名を伝えた
敵対するマフィアの幹部であるセツナが
縄張りの中をたったひとりで歩いているのを
そこら中からガラの悪い男達がニヤニヤと見ていた
目的のライブハウスに着いたセツナは
地下へと続く
薄暗い階段を降りて行く
"closed"の札が掛けられた金属のドアに
鍵は掛かっていなかった
ドアを開けた時
広い店内の中央の床に膝をついて座らされているリンの姿が目に飛び込んできた
彼女の近くには
何重にも男達が取り囲むように立っている
セツナは真っ直ぐにリンの側へ歩いて行くと
腕を掴んで立ち上がらせ
そのまま出口へと引っ張って行く
数人の男達が
慌てて2人の行く手を塞いだ
「……待て……暁辰会でも名の知れたオマエのような男がズカズカと他所の縄張りを踏み荒らしておいて…無事に帰れると思ってるのか?」
「……当然だろ……そんな事より…大の男が揃いも揃って…こんな子供ひとり取り囲んでる理由があるなら……帰る前に聞かせてもらいたいもんだな…」
「…なっ…ソイツはウチのボスを殴ったんだぞ!」
その言葉を聞いたセツナは
笑いながら「そうか」と言った
「…その腹いせがコレとは……お宅のボスの器が知れる…」
セツナの言葉に
周りの空気が一瞬にして殺気立った
「走るぞ」
セツナはリンの手を引き
ドアに向かって走った
空いた方の腕で
襲い掛かって来る男達を次々と殴り飛ばす
入り口まで来た時
セツナはリンの身体を思い切り外へ突き離すと
音を立ててドアを閉め
ガチャリと鍵を掛けた