第7章 過去
その時
ナナが雑貨屋から出てきた
紙袋を下げて
嬉しそうに歩いてきたナナは
2人の姿を見て顔を曇らせた
『………何か……あったの…?』
「……いや……別に…何もねーよ……なぁ響也…?」
「………あぁ……」
『……』
「………あ!……俺…チョット用事思い出した!……悪いけど…ココで…」
『……ぇ…店長…』
「じゃぁ響也…またな!…ユキも…気を付けて帰れよ!」
隆司が慌ただしく立ち去った後もその場に立ち尽くしていた響也は
ナナに顔を覗き込まれて我に返った
「………ぁ…」
『……どうしたの?…帰ろ?』
「…………そうだな…」
マンションへの道を歩きながら
ナナは紙袋の中を響也に見せた
そこには
色違いのマグカップが入っていた
『……前からずっと欲しかったの。……今日…バイト代貰ったから…買っちゃった。………コレに…私がコーヒー入れてあげるね………雅から何度も教えてもらって……すごく上手になったんだよ…』
嬉しそうに話すナナの隣を歩いていた響也が
不意に立ち止まった
「……」
『………響也…?』
響也は何も言わず
ナナの手を取り歩き出した
角を曲がって
誰もいない細い路地へ入ると
響也はナナの身体を強く抱きしめた
『……ぇ…』
「……」
『……響也…?』
「………少しだけ………このままでいさせて…」
ナナは
響也の背中に腕を回して目を閉じた
『……ずーっとでもいいよ…』
ナナの言葉に微笑んだ響也は
抱きしめる腕に力を込めた