第5章 笑顔の裏側
雅が何か言おうと口を開きかけた時
玄関の方で鍵の音がした
『…ぁ……響也が帰ってきたね…』
そう言ってナナは顔を輝かせた
嬉しそうに玄関へ向かうナナの背中を
雅は悲しい目で見つめた
玄関でナナと何か話した後
リビングに入って来た響也は
雅に言った
「…雅ー…ナナと一緒に昼メシ食ってくれたんだって?……ありがとな…」
「……ケイさん………お帰りなさい…」
響也は雅の表情に違和感を覚えた
「……雅…?どした……何かあったのか?」
「…ぇ……いや……ナンもナイっす…」
「……」
「………俺……店の準備があるんで…そろそろ帰ります。……ぁ……コーヒー…入れたんで……良かったら…飲んでください…」
「……あぁ…」
雅は
ナナに「じゃーまたな」と言って帰っていった
手を振り合う2人の笑顔は
いつもと同じように見えた
けれど
響也は
微かな胸騒ぎを感じていた