第24章 暴走
文字通り、そこに広がるのは血の海だった。
咽せ返るような鉄の臭い。
目が痛くなるほどの硝煙と粉塵。
倒れ込む黒い影。
そして、たった今発砲したと思われる、煙が立ち昇る銃口を向けるのは。
「よう、遅かったな」
画面の奥から、あたしを呼んだ人。
いかにも愉しそうに嗤う男に一瞬、言いようのない怒りが湧く。だけど、それよりも今は。
あたしは、倒れている人物に縋り付くように駆け寄った。
「ロー…!!血が…っ」
ローの血だ。
あたり一面の赤が、全部。
濃厚な血溜まりに膝をつくと、赤黒いそれがぬるりとまとわりついた。鼻腔を貫く鉄の臭いに頭がくらりとする。
ローは苦しそうに息をしながら、視線を動かしてあたしを捉えた。
「くそ…ッ、なんで来た……!?」
かろうじて声は聞き取れるけれど、口を動かすことすら辛そうだった。彼の身体がもう限界を迎えていることが分かる。
ローのこんな姿を見たことがなかった。
完全無欠で。
自信があって。
弱気なところなんて見せたことがなくて。
そんな彼しか知らなかった。
何の根拠もなく、彼なら大丈夫だと思っていた。
厳しい戦いになると分かっていたはずなのに、その続きが死に繋がっているなんて、想像もしてなかった。
ローは低く呻いて、そばに落ちていた刀を掴もうとする。それが何を意味するのかを察して、あたしは思わず彼の腕を止めた。
「お願い…っ、もう動かないで……っ」
流れた血は、到底人が生きていられるような量ではないはずだ。起き上がるなんて無茶だ。
本来、引き際は見誤らない人のはずなのに。
───13年。
この日のために費やした時間が、想いが。
ここまで彼を追い詰めている。