第23章 ゲーム(Ⅱ)
あたしはつくづく、あのモンキー・D・ルフィという男がよく分かんない、と思う。
「ねぇ、じゃあつまり、ルフィはさっきまでこのコロシアムで、その、はちゃめちゃなバトルロイヤルゲームに参加してたって言うの?」
「ああ。途中でおれと入れ替わったんだがな。なかなか楽しい大会だった」
コロシアムの地下、自然光の届かない薄暗い通路。前を歩く背中から、からりと声がする。あたしは呆れてものも言えなくなった。
今朝、あんなに張り切って船を飛び出して行ったかと思えば、まさかあの男、そんな物騒なものに参加してたなんて。目立つ行動はするなって、ローがあれほど言ってたはずなのに。
「大丈夫だ。その時はルーシーって偽名を名乗ってたからな」
アイツ頭よくなったよなァ、なんて呟いているブラコン兄にツッこむ気も失せる。弟も弟だけど兄も兄、だ。
あたしはこの人に何を言うのも時間の無駄だと判断し、おとなしく話の続きを催促することにする。
「で、そのルーシー1と2は、どうしてそこまでしてコロシアムに参加したかったの?入れ替わってまで…って、わ、」
「お、悪い」
急に立ち止まったサボの意外とたくましい背に、あやうく顔をぶつけそうになる。かろうじて立ち止まり、その背中越しに様子を伺うと、そこは。
「ビンゴだな」
サボの言葉に応じて、あたしも小さく頷く。コロシアムの地下に降りて、いくらも歩いていない。こんなところに、あったなんて。
「本当にあったんだ…」
大量の船が集まる港。
人の目に触れない地下にある取引の場。
──サボの探していた、密輸船の貿易港と言ってよさそうだった。