第22章 ゲーム(Ⅰ)
「じゃ、疑惑が晴れたところで、ウソップの元まで案内してもいい?」
「ああ、頼む」
「あんまり範囲を広げられないから、ちょっとずつになるんだけど…。ひとまず、地下から空気の流れがきているのはあっちね」
指さしたのは、あたしたちの前にでん、と構える闘技場。門の方に近寄ってみて、やはりと確信を持つ。ゆるやかな風の流れが、やはりこの建物の中から流れてくるのだ。
ドフラミンゴのせいで範囲を広げて使えないところがネックだけど、こういう時は我ながら便利な能力だなぁと思う。それから、ふと思い出して尋ねてみた。
「そう言えば、どうしてこの能力が良かったの?」
「なんでだろうな…。無意識のうちに火と相性がいい能力を探していたのかもしれねェ」
「火…?」
それって。
「ポートガス・D・エースの…」
2年前の頂上戦争で命を落とした男。
天下最強の白髭海賊団の1番隊隊長であり、ルフィの義兄弟…。
…そうか。
ってことは、あなたの義兄弟でもあるのね。
そこまで思い出した時、
「ああ、そして今はおれと共に居る」
そう言ってサボはニヤリと笑った。
同時に、手の中でボウッと燃え上がる真紅の炎。
火拳のエースと呼ばれる所以でもあったそれは、確かに、まるでサボの傍らに居るかのようだった。
「メラメラの実を食べたの!?」
「ついさっきな。さあ、行くか」
軽快な返事を寄越し、ひょいと軽くコロシアムの門を飛び越えるサボ。
「えっ?あ、ちょっと!!まってよ!」
静止する声も聞かず、颯爽とコロシアムの中に消えていく彼。あわてて追いかけながら、あたしは内心ため息を吐く。
……ほんとに、どうしてこんなに自由人ばっかりなのよ。
またふりまわされそうな、いやな予感を抱えつつ、あたしはその人共に地下へとくだる。
──地上の光が届かないドレスローザの地下へ。
第22章 『ゲーム(Ⅰ)』 <END>