第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
──あぁ。やっぱり。
やっぱり、あなただったのね。
熱いものが目から溢れて頬を伝った。
さっき、ベビーファイブから聞いた時に、薄々分かっていたの。…いや、違う。
本当はもっとずっと前から気づいていたの。
ただ、それを認めたくなかっただけ。
そうじゃないかと思ってた。
そうじゃなければいいと思っていた。
だって。
「長年一緒にいたにも関わらず、裏切りに気付かなかった。確かに優秀な男だった。…だが」
コラさん。
ロシナンテ。
ローの大切な人。
夢の中のあの人。
全てが、一つに重なる。
大きな口でニカっと笑って、あたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
あたしの名前も、あのひも飾りも、そして多分、命さえも、くれた人。
──だって、それじゃあ、あなたはもう。
あたしは、もう。
「───だが、俺がこの手で殺した」
──あたしはもう、貴方に会えないじゃないの。
第19章 『ドンキホーテ・ロシナンテ』<END>