第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
島を出るなと強く言わなかったのは俺だ。
あの頃、突き放す方法はいくらでもあった。
それをせず、黙って立ち去った。
胸の内ではそこを動くなと願っていたにもかかわらず、それを言葉にすることを躊躇った。アイツの自由を奪うようなことを安易に言いたくなかったし、本人にも言ったように、それを制限する権利は誰も持ち合わせていねぇと思ったからだ。
だが、こうなってしまった以上、その甘さが間違っていたと思わざるを得ない。
──やはり、お前は島を出るべきじゃなかった。
アウラが自らドフラミンゴの元に降り立った時、再会してから何度目か分からないほど繰り返し思ったことをまた思い、初めて深く後悔した。
同時に、俺やコラさんがアイツを引き止めたとして、果たしてそれで何か変わったのか疑問に思った。
むしろこのタイミングでここに来たのは運命だったんじゃねぇか。アイツ自身が望んでたかどうかに関わらず、そういう巡り合わせだったんじゃねぇか。
そんなくだらねぇ考えが頭を掠める。
仮に、もしそうなら、あの男を倒せばいいのか。
そうすればアイツを自由にしてやれるのか。
衝動的に考え、また深くため息を吐いた。
「…それを考えるのは今じゃねェな」
傷は癒えてねぇが、これだけ体力が回復すれば、一人逃がすくらいはまあ何とかなるだろう。何より、これ以上アイツがドフラミンゴの元に居ることに耐えられそうに無かった。
横に立て掛けていた愛刀を担ぐ。
遥か遠くに見える王城。
息を吐くより自然に能力を発動する。そして──。