第3章 白と赤
心地いい潮風が頬を撫でる。
後ろには愛してやまない生まれ育った島。
「すっごーい…」
思わず口に出して呟く。
どこまでも青い空と海。
傾いた太陽の光が波に反射して海面がキラキラと光っていた。
そんな海面を掻き分けるようにして商船はぐいぐい進む。
──初めてあの島を出た。
ずっと海に出たかった。
だけどずっと決心がつかなかった。
夢って言うほど大それた野望も目的もあるわけじゃないから。
ただ、この広い世界を自由に旅することができたらどれだけ幸せだろう、って、たまに考えていただけ。
だけどやっぱり。
たった1週間の旅でこんなに心が湧き立つってことは、それだけ強く恋い焦がれていたのかもしれない。
少なくとも今あたしは、これ以上無いくらい幸せな気持ちでいっぱいだ。
腕の中でジョナサンが心地良さそうに眠っている。
この子を無事送り届けるついでに、少しくらい夢をみたってバチは当たらないよね?