第17章 岐路(Ⅱ)
「ほんっと秘密主義なんだから!いやんなる!!」
「アウラちゃ〜ん!怒ってる君も素敵だ〜〜!!ちょっと待っててくださぁあーい。おれが美味いメシ持ってくるから〜〜ん」
麦わら一味の船──サウザンドサニー号の上、サンジがクネクネと小躍りしながら、驚くような速さで料理を運んでくる。あたしはそれらをひたすら口に運びながら、ついさっきまで隣にいた男に腹を立てていた。
あたしをひどい言葉で突き放した男──トラファルガー・ローに。
──サニー号に乗り込む前、あたしはたしぎさんやスモーカー中将、海兵さんたちに別れを告げに行った。
短い間だったけど、優しくしてくれた人たち。そんな彼らに何も言わずに去ることなんて到底出来なくて。
お世話になった彼らには、ちゃんと伝えないといけないと思ったの。これから、彼らとは別の道をゆくことを。
"正義"を掲げる人たちに背を向ける意味を、分からないあたしではない。スモーカー中将の言うことはもっともだったし、次会う時はきっと、海兵たちやたしぎさんもにこやかに迎えてはくれないだろう。
だけれど、彼らと共に行くことだけはどうしてもできなかった。一緒に行ってしまっては、あたしがここまで来た意味がない。
──この選択によって、例え彼らに追われる身になろうとも。
それだけの覚悟を持って、ローと共に行く決心をしたのだ。あたしだって、生半可な気持ちでここまできたわけじゃない。
「それなのにあの人は、人の気も知らないで…」
ローは、どこまでもあたしと一線を引きたいらしかった。
彼の放った一言を思い出し、また声を荒げそうになって、何とか思いとどまる。
…落ち着いて、あたし。
子供たちを助けてくれたことを忘れちゃいけない。
もう少し遡って考えよう。
そう。
始まりはパンクハザードを出発して間も無くだった。あたしがローと一緒にサニー号の船首にいた時のこと。
彼はおもむろに口を開いたのだ。