第15章 存在理由
『いいか、よく聞け』
電伝虫から聞こえてくる。
その声が、言葉が、どうしようもなく頭に響く。
──ああ、痛い。
痛い。いたい。イタイ。
『これは命令だ』
──いやだ、聞きたくない。
聞きたくない、のに。
『その島を出て、真っ直ぐ俺のもとへ来い。──必ずだ』
──ズパン
ローが電伝虫をぶった斬った…んだと思う。
あたしはそれをちゃんと見ることすらできなかった。
割れるような頭の痛み。
立ってることすら限界で。
男の言葉だけが、グラグラと無遠慮にあたしの脳を揺さぶる。
「…い…ったい……」
さっきはなんとか持ち堪えたのに。
だけど、今度は、もう。
あまりの痛みに目を細めると、熱い雫が頬を伝って落ちた。
──限界だった。
血が滲むくらい唇を噛みしめても、これ以上は我慢できそうになかった。
痛い。嫌だ。──助けて。
何も考えられなくなって。
だから、また。
あたしは、全てを手放してしまったの。
この痛みも。
葛藤も。
想いも。
マリージョアのあの時のように。
「アウラ…!!!」
涙でぼやける視界に最後に映ったのは、誰かが伸ばした腕だった。