第2章 旅立ち
「言われなくても外さないよ!」
びっくりさせられたから思わずトゲのある言い方になった。
さっきからなんなのよもう。
ますますこの青年のことが分からなくなった。
結局得られた情報は海から来た、というそれだけ。
「...わけわかんない」
むすっとして呟く。
次なんか聞かれても絶対答えてやるもんか。
そう思って口を真一文字に閉じていたのに。
「なんで追いかけられてたんだ」
なんでもなかったかのように青年が尋ねるから、腹を立てるのもばからしくなって思わず口を開いてしまった。
「...あいつら面白がってるの。あたし、昔からどんくさくて、何にもできないから。からかっていい気になってるのよ。ほんとむかつく」
最後はほとんどグチだった。
思い出しただけで腹が立つ。
いつもいつもいつも。
ああやってあたしを追いかけ回して、こけて泣くのを見て喜んでる悪趣味な奴ら。
「そういやさっきもこけてたな」
思い出したように言う青年。
だから!見てたなら助けてよ!
そう言おうと顔を上げて、結局何も言えなかった。
さっきまで無表情かどちらかと言うと不機嫌そうな顔をしていたのに。
なぜか青年が泣きそうに見えて。
金色の目の奥に哀愁とも取れる切ない色が過ぎった。
…なんでそんな顔するの。
思わず目線を落として、地面の石ころを見つめる。