第14章 ゆりかご
こんなことって。こんなことって。
お願い。
誰か嘘だと言って。
じゃなきゃ、もういっそのことこのまま気絶させて。
起きた時、何もなかったと言えるように。
お願いだから…。
「おーい。トラ男〜〜なんで固まってんだ?」
「ルフィ。もしかしたら彼、ローじゃないかも知れないわ」
「何言ってんだ?どう見てもトラ男じゃねェか!…ハッ!まさかお前、忍者なのか!?トラ男に変装してんのかっ!?」
「何でそうなるんだ」
「何だよフランキー。侍がいるんなら忍者がいてもおかしくねェだろ」
「それはどういう理屈なんだ!違ェよルフィ。ロビンが言いてェのはそういうことじゃねェだろ」
「フフ…きっと、彼が戻ってきたら説明してくれるわ」
あたしはもう、思考を放棄するしかなかった。
だから、すぐ隣でこんな能天気な会話が繰り広がられていても、そこに参加する気力もなかったの。
あたしの放心状態は、突然近くの船が爆発して、宙吊りにされた檻を煙が包み込み。
その檻の中──あたしたちのちょうど真ん中につむじ風が現れて。
そしてそれが、1人の人間を形作るまで続いたのだった。
──銀髪の、見まごうことなきその少女が現れるまで。