第2章 旅立ち
指差す先にはあたしの足。
泥や砂まみれでところどころ傷もある。
足がどうしたのかな。
ケガのこと?さすがに違うよね。
何を聞きたいのか分からなかったから、返答に困って青年を見つめる。
「足についてるそれだ」
え?
…あ、わかった。
足じゃなくて、これのことね!
やっと指しているものが分かった。
あたしの足首には細く編まれたひも飾りが付いている。
ただのひもに見えるのに意外と頑丈で、今まで千切れたことはない。
青くて細いひもで繊細に編み込まれた飾りには一つだけ丸い石のようなものが付いていた。白く濁った親指の爪ほどの小さな石。
青いひもの中に編み込まれていて、いつもゆるく肌に当たっている。夏はひんやりしてて気持ちいいんだこれが。
「お守りよ。ずっと付けてるの。あたしがもっとうんと小さかった時に、誰かに外すなって言われたと思うのよね、たぶん」
あまりにもあやふやな記憶に言いながらふふっと笑ってしまう。
そう言ったのは誰だったかな。
なんとなく、よく夢に出てくるあの人のような気がする。
大きな影と大きな手。
ニカっと笑う赤い口で「自由だ」と言ったあの人。
それでかな、なんとなくこの飾りが外せないのは。
お下がりじゃない、あたしのために与えられたものは全部―このひも飾りも容姿も手放したくなかった。
孤児だからこそ、すがる何かが必要なのかもしれなかった。