第1章 夢
ここは北の海(ノースブルー) 、ミカヅキ島。
ミドル王国の最西端に位置する小さな島だ。
その名の通り三日月みたいに弓形に反った形をしていて、特に名産品らしいものは無いけど、そのおかげで海賊も滅多に寄り付かないし島民も穏やかな人が多い―そんな島。
海賊や賓客ってのはこんな外れの島じゃなくて、ミドル王国の本島の方にしばしばお邪魔するらしい。聞いた話だけど。
とにかく、あたしたちの島は、穏やかで平和で温かい、そんな素敵な島。
カームベルトに近いから大きな天災が滅多に来ないのもいいところだった。
あたしの暮らすマリーゴールド教会は、そんな島の中心から少し東に外れたところにあった。
これにはいろんな理由があるみたいだけど、孤児たちが広い土地でのびのび暮らせるようにってことと、両親共に暮らす裕福な家庭の子に孤児たちが劣等感を抱かないようにってのが大きいみたい。
ま、2つ目に関してはあたしは街の近くにあっても劣等感なんて抱かないと思うけどね。うちの教会、毎日うるさいくらい賑やかなんだから。
だけどそうは言ってもやっぱり、教会での暮らしはどっちかと言うと貧乏なのは確かで。
それを考えるとまあ、教会が街外れにあるのも頷ける。
頷ける、んだけど。
「でもだからって!こんなに遠くする必要はないと思うの!!」
息を切らして走りながら思わず叫ぶ。
だってあんまりじゃない?
これから働くってのにその前に40分全力疾走。
あんまり筋肉がつくタイプでもないのによくもまあこんなに走れるもんよねと我ながら感心する。