第11章 疑惑の研究所
「…そう言えば、お嬢さんの名前もまだ聞いてなかったんじゃないかしら」
1人悶々としていると、ロビンが久しぶりに口を開いた。
本当だ。
いきなり飛び出して色々聞いておいて、あたし、自己紹介もまだだった。
「そうだったかも。あたし、ト…」
いつものように"トラ"って言おうとして、一瞬、あの人の挑発するような笑みが頭に浮かんだ。
くそう。無性に悔しい。
どうしてあの人はああやって人を馬鹿にするようなことしか言えないの。
もう、金輪際、"トラ"って名前は使わないようにしよう。
あたしはそう決心して、その瞬間、ふと気付く。
──ローが悪事に加担してるかどうかなんて、そんなことを今考えても仕方ないじゃないの。
気になるなら確かめればいいのよ。自分で。
だって、彼は遠い海の向こうにいるわけじゃない。
──彼は、すぐそこにいるんだから。
「あたし、アウラ。よろしく」
──こうして、あたしは麦わらの一味と出会ったの。
子供。実験。クスリ。
普通、一緒に並ばないはずの言葉の、奇妙な組み合わせ。
あたしがここに来たのは、必然か、はたまた偶然か。
それはまだ誰にも分からない──。
第11章 『疑惑の研究所』 <END>