第1章 夢
まただよ。
またあの夢だ。
あの人は今日も無責任に、お前は自由だ、なんて言ってた。
…なーにが自由よ。
勝手なことばっか言って。
一つため息を落として、ぐぅっと伸びをしてみる。
お世辞にも柔らかいとは言えないベッドの上、凝り固まっていた体が解されて、気持ちもいくらかスッキリした気がした。
どこの誰だったかなんて知らない。
顔もはっきり思い出せない。
だけど、幼かったあたしをすっぽり覆うくらいの大きな影を落としながら、ぐしゃぐしゃと頭を撫でるその手が、どこか懐かしくて、この夢を見た朝はいつも泣きそうになる。
多分、覚えてる限りではあたしの一番古い記憶。
「…ほんっとに迷惑な話なんだから」
物心ついた頃から急に出てきて、言うだけ言って消えちゃう勝手な人。
残されたあたしのこの寂しさと懐かしさは何なの。どこの誰なんだか、ちょっとくらい教えろ!って感じ。
勢いよくベッドから飛び降りる。反動でベッドからも床からも、みしっと音が鳴った。
はあ。もやもやする。
夢の残像を追い払うように頭を振ると、腰まで伸びた銀色の髪が朝日に反射してきらきらと光った。