第7章 最悪と最善
声は、出なかった。
反転する視界。
見えたのは、今にも泣き出しそうな曇り空。
スローモーションで落ちていく中で思ったのは、本当にどうでもいいようなことだった。
マリー、なんであたしが泳げないこと知ってたんだろう、とか。
最後に言ったあれは何?
あれはあたしのことを呼んだの?とか。
どうして、マリーはあたしにキスなんかしたの…とか。
──それに。
どうして、一緒に逃げてくれないの。
みんなで一緒に逃げるのよ、マリー。
みんなってのは、マリーも入ってるんだから。
──どうして。どうしてなの。
疑問は曇天に吸い込まれて、あたしは何もできずにただ落ちてゆくのだった。
第7章 『最悪と最善』 <END>