第5章 時代
「で、友達になるのはいいけど、君は今から島に帰るんでしょう?次はいつ会うかな」
マリーは風に髪をなびかせながら首を傾げた。
そう、そうなんだよね。自分でもなんで友達になろうなんて言い出したのかわからない。
この人がどこから来てどこへ帰るのか知らないけれど、ここで別れればこれっきりで、次会う可能性なんてほとんどゼロに近いんじゃないだろうか。
「なんでかな。懐かしい感じがしたの」
「懐かしいって、おれが?」
少し目を丸くするマリーにうん、と頷いてみせる。
懐かしくて、安心するような。
そんな気がしたの。
本当に直感なんだけど。
「そう?おれは全くそんな気がしないけど」
きょとんとした顔をしてから、にべも無く否定する彼。素直すぎるその反応に思わず白けてしまう。
「……そう」
別に同意を求めて言ったわけじゃないけれど。でもこういう時ってもう少しうまい返事があるんじゃないの?
この人には空気を読むとか、人を気遣うとか、そういう感覚はない、みたい。ちょっと呆れてしまう。
マリーはそれすら気にした様子もなく、おもむろに港の船を指さした。
「それで、どの船に乗るの?」
言われてあたしも港に目を移す。
確かにものすごい数の船がある。この中から目的地へ向かう船を見つけ出すのは骨が折れそうだ。
港の誰かに聞いてミカヅキ島へ向かう船を教えてもらわないと。