第7章 不安
サトルの事務所の力は大きく
ある時を境に
このスキャンダルをメディアで全く取り上げなくなった
元々が事実無根だったこともあり
この騒動は時間の経過とともに忘れられ
まるで何も無かったかのように
日常が戻ってきた
しかし
黒川という記者だけは
まだ諦めていなかった
マンションに張り付くうちに
ひとりの女子高生の存在が
サトルの周りに浮かんできたのだった
都立高校に通う彼女は
名前を
杉本 リサと言った
リサは
サトルと同じマンションに住んでいるようだった
そして
彼女のバイト先は
サトルの行きつけのカフェでもあった
ある日
黒川は " SAISON " を訪れた
忙しそうに働くリサを観察する
特に変わった様子はなく
ごく普通の女子高生に見えた
リサが休憩に入った隙に
黒川は
店のスタッフに話し掛けた
「……さっき洗い物してた女の子……この間…真山サトルと一緒にいる所を見かけたんだけど……どういう関係なの?」
「……あぁ……彼女は従姉妹らしいですよ…」
「……へぇ……」
従姉妹と聞いた黒川は怪しんで手帳を開いた
サトルの親戚関係に
杉本という名字の人間は居ないはずだった