第6章 芽生えた感情の名は

「…メグル、こっち向けよ」



「え……？んっ……」



「……………」



「……んんっ！も、もう何やって……」



「ナニって……ん……、ジャマ？ククッ」



「……っ……」



「んっ……チュッ……」



「(なんか、お母さんに構って欲しくて料理の邪魔する子供みたい…。アヤトくんも構って欲しいのかな？)」



私はアヤトくんに味見を頼もうと思った。



「しょーがないなぁ。じゃあ…はい。」



「あ？なんだよ？」



「まだ完成してないけど、味見させてあげる」



「ケッ、バーカ。そんな毒味みてぇなマネできるかよ」



「毒味!?もう！アヤトくんは一言多い！」



「それ食って腹でも壊したらどーすんだ」



「肉は焼かなくても食べるクセに。そっちの方がお腹壊すよ…」



「毒とか入ってんじゃねーだろうな」



「入ってるわけないでしょ!!…もう、自分で味見するからいいよ」



スプーンでデミグラスソースを掬って、二三度冷ましてから口に運ぶ。



「美味しい！やっぱり上手くいった！」



「……………」



「！」



後ろから顎を掴まれ、ぐいっと顔を上げさせられたかと思えば、アヤトくんの唇が私の唇と重なる。



「……ん……っ」



「んんーっ！」



「………っ、ふうん。悪くねぇじゃん。毒も入ってなかったみたいだしな」



「あ、当たり前でしょ!?というかキスしただけで味なんて分かるわけないじゃない!!」



「ククッ、ほら、さっさと作っちまえよ」



「邪魔してるのはアヤトくんでしょ…」



結局放してくれないし



「アヤトくんって意外と甘えん坊…？」



「あ？なんだって？」



「あ、ううん！えっと、アヤトくんって、好きな食べ物とかあるの？」



「あるぜ。一応な」



「え？何が好きなの？」



「たこ焼き。あれはうめぇ」



「たこ焼きが好きなの…？」



「なんだよ、なんか文句でもあんのか？」



「ううん…ないけど…ふふっ」



まさかの回答に可愛くて笑ってしまう。



「なんだよ、何笑ってんだテメェ！」



「わ、笑ってないよ！私も好きだよたこ焼き！特にチーズと明太子が乗ったのが美味しくて好き！」



「そんなのもあんのか。他には？」



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