第6章 芽生えた感情の名は
「このオレ様を堕とす気なら、他の野郎に尻尾振るんじゃねぇぞ。オマエはただオレの傍にいて、馬鹿みたいに笑ってりゃいいんだ」
「ば、馬鹿みたいにって…!」
「おら、笑え!」
「いひゃっ!?」
「ハッ、ぶっさいく。」
「抓らないでって言ってるのに!」
いつものように頬を摘まれ、当然のように悪態をついて笑うアヤトくんに私は怒る。
「あ、アヤトくん…痛いよ」
「これでも優しく摘んでやってんだろ。あんまりうるせぇと思いきり横に引っ張んぞ」
「(頬が弛む…!!)」
別の意味で涙が出そうになった。
「オマエに触れていいのはオレだけだ。こうして抱きしめてやんのも、キスしてやんのも、いじめて泣かせんのも全部オレだけだ」
「アヤトくん……」
「しつけぇってくらい構い倒してやるから覚悟しとけ。いいな?」
「うん」
「よし」
その言葉に頬を緩ませて笑う。頷いた私を見てアヤトくんも笑った。
「(不思議…さっきまでの黒い感情が消えてる。そっか、あれは嫉妬だったんだ。もう胸も痛くないし、苦しくもない。)」
「ナニ、ニヤニヤしてんだよ」
「わ……っ!ちょ、ちょっと!急に足抱えないでよ…!」
後ろに倒れそうになり、私は咄嗟にアヤトくんを支えにして掴まる。
「ククッ、転びそうなら掴まっててもいいぜ?ほら。」
「あ、ありがとう…」
「掴まらせてやる代わりに悪戯はするけどな」
「ええっ!?」
アヤトくんは足元にあったバケツを手に取り、私の足をそこに入れる。
「つ、冷た……っ」
「冷たくて気持ちイイだろ?」
「う、うーん…確かにひんやりしてて気持ちいいけど…」
こ、この格好が恥ずかしい…!!
「(み、見えちゃう…下手すればスカートの中が見えちゃう…!)」
「じゃあ、こっちはどうだ?」
パシャッ
「あ……!」
今度は胸元に水を掛ける。直接肌に触れ、ビクッと体を跳ねさせた。
「ククッ、肌が透けて見えるぜ?やーらし。」
「だ、誰の……っ」
「オレがつけたキスマークもまだくっきり残ってんな。消えそうになったらまた付けてやるから言えよ。今度はもっと強めに吸ってやるからさ」
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