第6章 芽生えた感情の名は
「オレがチチナシにベタベタ触んのが嫌だったんだろ?いつもはオマエにしか触れねぇもんなぁ?そんなに泣くほどオレ様を誰にも触らせたくねぇのかよ」
「し、嫉妬なんて!私はただ…!…ただ…アヤトくんがユイちゃんに触っているのを見ると…凄く胸が苦しくて…悲しくて…二人の距離が少し近いのが気になったというか…」
「……………」
「ユイちゃんにアヤトくんを盗られたらやだな…とか思っちゃったの」
「!」
「心の奥底から込み上げる黒くてドロドロした感情が消えないの。こんな気持ち…嫌だ。ねぇアヤトくん…私、病気なのかな?」
「病気じゃなくて嫉妬だろ。その黒くてドロドロしたもんはチチナシにオレを盗られたくねぇっつー醜い感情の塊からきてんだ」
「私がユイちゃんに嫉妬…?」
「それ以外に何があるんだよ」
「どうして…ユイちゃんに嫉妬なんか…」
「ハァ?オマエ本気で言ってんのか?」
「え?」
「"え?"じゃねえ!どこまで鈍感なんだよ!このバカ地味子!」
バチンッ
「痛ッ!!」
本気で呆れ返っているアヤトくんから少し強めのデコピンをもらう。
「鈍感過ぎにも程があるっつーの!」
「だから何が!?」
「オレとチチナシの仲を見て嫉妬したり、オマエが突然泣いたり、胸が痛くなって黒い感情が芽生えたのは、オマエがオレを好きだからに決まってんじゃねえか!」
「!」
「実際オマエ、すげーショックな顔してたぜ?オレがチチナシに触れた時とかな」
「私が…アヤトくんを…好き…?」
自分の気持ちに戸惑う。
「好きだから、オレをアイツに奪われるのが嫌で嫌で仕方なかったんだろ?」
「…わ、わかんないよ」
「オマエ…オレがチチナシに触った時、"触らないで"って思ったんじゃねえの?本当は誰かがオレに触れるのも嫌なんだろ?」
「っ………!!」
「その顔、図星だな」
意地悪くニヤリと笑ったアヤトくんに、私は顔を赤くする。
「ち、違っ!私はアヤトくんなんて…!」
「まだ嫌いって言うつもりかよ。もうオレが好きだって言ってるもんだろ。今更隠すんじゃねーよ」
「……………」
「オマエはオレが好きなんだよ」
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