第5章 変化する気持ち
「あ、あんまり服に触らないで…っ」
この服
サイズが小さいせいで
胸のあたりが少し窮屈なんだけど…!
「アヤトくん…この服、ちゃんと私のサイズに合ってるから渡してくれたんだよね?」
「あ?オマエの服のサイズなんて、オレ様が知るわけねぇだろうが」
「(やっぱり…!)」
「ナニ?もしかして胸が窮屈とか?」
「っ………!」
「下手に動くとボタンが弾け飛んで、オマエの下着を通行人共に見られちまうかもな?」
「や、やだ!アヤトくん…!」
「ほら、あんま動くなって。オマエ、地味で生意気でオレに反抗ばっかすっけど、体つきと胸だけは悪くねぇからな」
「え……?」
「隠してる方がもったいねぇだろ?」
「(騙されないんだから…。絶対面白がってるだけ…!)」
「ククッ、ほら、さっさと歩けよ」
「無理…!!」
私の恥ずかしさは限界に達し、その場にしゃがみ込む。
「こんな格好で街中にいるなんて耐えられない!もう帰ろうよアヤトくん!」
「オマエ…それで隠してるつもりか?」
「え……?」
「そのほうが見えるぞ。スカートの中」
「あ…っ、や、やだ!!」
慌てて立ち上がり、スカートの裾をグッと下に伸ばして押さえる。
「アッハッハ、バーカ。オマエほんとマヌケだな!」
「あ、悪質なイタズラだよ…!」
「言っただろ。これは散歩だって。オレがオマエをいじめるわけねぇだろ?」
「(完全に笑ってるけど!?)」
先程よりも人の視線を集めてしまう。
ドンッ
「っ………!」
通行人とぶつかり、私は咄嗟にスカートを押さえる。
「(今の人、わざとぶつかって来た!?)」
「……………」
「(それに、あっちの人たちも、明らかにこっち見てる…こんな格好してるからだ。もうやだ、帰りたい…)」
目に涙が溜まるのが分かった。
ガシッ
「オイ、帰るぞ」
「え?」
「さっさと来い。…チッ、面倒だ。飛ぶぞ」
「な、何、急に?」
「飽きた。もういい。」
「飽きたって…」
助かりはしたが、相変わらずの勝手さに呆れてしまった。そしてアヤトくんが空を飛び、私達は屋敷に帰ってきた。
.