第5章 変化する気持ち
『うわぁぁぁああーっ!!』
母親に水の中に落とされたアヤトは顔を出し、息をする。
『っぷ、はっ……!』
『そこで少し頭を冷やしなさい』
『そんな……っ、母さ……』
水の中に沈もうとする体を必死にばたつかせ、陸に上がろうとする。
『誰が上がってきていいと言ったの?』
『っ………!』
『まだよ。これは罰なんだから。アンタには誰にも劣っちゃいけないの。同等でもダメ。常に最強でいなくちゃいけないの。それが出来ないなら…アンタはアタシの子じゃないわ!一番じゃないアンタはいらない。用済みよ。』
『やだ!やだよ、母さん!う、っうぅ…』
『…おやおや。相変わらず過激ですね』
『あら、リヒター。そんなことないわ。これはお仕置、躾の内よ』
『リヒター…!』
『それでは…私をこんなところに呼び出して…これからしようとしていることもお仕置のひとつなのですか?』
『!?』
リヒターの言葉にアヤトは驚いた顔をする。
『うふふ、それはこの子へのお仕置じゃないわ。アタシを放ったらかしにして、あんな女にうつつを抜かしている…あの人へのお仕置き……んっ……』
『……………』
コーデリアはリヒターに口付ける。
『リヒター…』
彼女は撫で声でリヒターの名を呼ぶ。
『本当にひどい方ですね…。貴女は私の気持ちをご存じの上でそれを利用しようとされている』
『あら、アタシを利用しようとしているのは、アナタも同じでしょう?アタシのこの血を、利用したいのでしょう?あの人に勝つために』
『…コーデリア…』
『それに…最近あの人が執着してるあの女、名前は何て言ったかしら?』
『ミカエルですよ。天界を統べる四大天使の一人で、天使として相当な力を持つ女です』
『ミカエル…そうよ、そんな名前だったわ。あの人を独り占めしようとする忌まわしい女!あの人もあんな冷たい女の何がいいの!本当に腹が立つ…!』
コーデリアは憎しみで顔を歪める。
『いつかあの女も痛い目に遭うと良いわ。さぁリヒター、向こうに行きましょう』
『……はい……』
リヒターと共にコーデリアは去って行く。
『嫌だっ、嫌だよ…っ、母さん!う…うう…やめて…嫌だぁぁーーっ!!』
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