第4章 神の御遣い
『あぁっ、せっかく捕まえたコウモリが逃げちゃった…!……う、うぅ……っ』
『あー、カナトくんてば、泣かないの。あんなのすぐ捕まるって』
『そうだぜ!メソメソすんな!このアヤト様が捕まえて来てやる』
『よし、じゃ行くよ、アヤトくん!』
『あ、待てってば!オレ様が先につかま…』
ガシッ
『っ!』
『こんなところにいたの、アヤト』
『母さん…』
『いつまでも遊んでないの。さ、帰ってお勉強よ』
『や、やだ…!さっきまでもずーっと勉強してたじゃないか!』
『アンタ…ずっと上の空で、全く頭に入っていなかったでしょう?』
『だって…』
『言い訳は聞かないわ。さ、行くわよ』
幼いアヤトの手を母であるコーデリアが掴むが、アヤトはその手を払い除ける。
『カナトとライトは遊んでて、どうして僕だけ勉強しなきゃいけないの!?』
『アンタは他の子とは違うからよ。さ、言うことを聞いて!』
『やだ!もっと遊びたい!』
『…このっ、口ごたえするんじゃないわよっ!』
バチンッ!
『わ……っ!』
自分の命令を聞かないアヤトに苛立ったコーデリアは手を上げてしまう。アヤトはその衝撃で地面に倒れた。
『そんなんで、一番になれると思ってるの!?アンタは負けてはいけないの!あんな女の子供なんかに…!』
『母さん…』
『アンタは常に一番でなくては。一番はアンタ。次期当主になるのは…アンタなのよ。アンタが一番よ。きっとそう。そうすればアタシが…あの人に…。家を継ぐ息子の母であるアタシが…認められるからね。ベアトリクスの婆には、絶対に、負けられない───。』
◇◆◇
「ん……」
「…………」
「はぁ…地味子?なんでオマエがここに…って、あー。オレが連れて来たんだけっか」
「大丈夫?アヤトくん。随分うなされてたみたいだけど…。嫌な夢でも見たの?」
「…なんだよ。いつもみてぇに『アヤトくんのばか!また寝てる間に連れ込んで!』みてぇな文句はねぇの?」
「…………」
「チッ。ンな顔してんじゃねぇよ」
心配そうな私の顔を見て、アヤトくんが小さく舌打ちをした。
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