第4章 神の御遣い
【嶺帝学院】
「はぁ……」
アヤトくんを避けちゃってるな…
「(この前の遊戯室の時以来、なんかアヤトくんと顔を合わせづらい。それに…無理やりキスしたこともまだ許してないんだから…)」
誰もいない廊下を一人で歩く。いつもならアヤトくんが悪戯をしに来ていたのだが、あの一件以来、彼を避け続けるようになった。
「(懐中時計は返してもらえて良かった。これは母様が残してくれた大事な形見だからちゃんと大切に持っておかなきゃ。)」
「オイ!」
「きゃ…!」
いきなり後ろから腕を掴まれ、驚いて振り返る。
「あ、アヤトく…!」
「ナニ逃げてんだよ?」
「逃げてなんか…」
「逃げてんだろーが!最近ずっとオレのこと避けてんだろ?教室に行ってもオマエは居ねぇし、裏庭のベンチにも居やがらねぇ。これのどこが逃げてねぇって言うんだよ?」
「……………」
「どういうつもりだよ?あぁ?」
「……っ……」
「答えろ!」
「…やめて!」
ドンッとアヤトくんを突き飛ばす。
「うぉ!?」
「ご、ごめん!アヤトくん!」
「あ、オイ、こら!!逃げんなっ!」
そうして私はアヤトくんから逃げるようにパタパタと逃げ去った。
「ったく、なんなんだよ、アイツ…!」
◇◆◇
【倉庫】
「(ここまで来れば見つからないよね…)」
薄暗い倉庫に逃げ込み、扉を閉める。
「(家でも学校でも一緒だし、ずっと避け続けるなんてできるわけないのに…)」
ズク…ッ
「っ……!まただ…胸が痛い…っ」
【誰か】が掛けた呪いのせいで胸が痛み、息苦しさに顔をしかめる。きっと魔族と必要以上に関わり過ぎたせいもあるのかもしれない。
「(早く運命の相手を見つけないと…)」
不安になって、胸辺りの制服をギュッと握る。
「よぉ、地味子」
「……えっ!?」
耳元で愉しげに囁かれ、目を見張った私は後ろを振り返る。そこにはアヤトくんがいて、私は後ずさった。
「それで隠れたつもりかよ?ククッ、そんなんじゃオレ様は撒けねぇぜ?」
「来ないで…」
「随分と簡単な鬼ごっこだったなぁ?」
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