第21章 不確かな繋がり
【バルコニー】
「ここにいると…思い出すな」
「え?」
「あの人を殺した時のことを」
「……………」
「ここにね、来たんだよ。血まみれになった彼女がさ」
『ライト…ライト…』
『どうしたの、その格好。誰かに血でも飲ませたわけ?』
コーデリアのドレスが真っ赤に染まっていた。
『違うわよ…アヤトが…あの子が、アタシをこんな目に遭わせて』
『へえ、アヤトくんが。まあ、アイツなら納得だよ』
『っ…まだ、追ってきてるかもしれない…。アタシ、今日は久しぶりにカールハインツと寝るの。だから、ライト…愛してるわ。アタシを、守りなさい』
「正直、ボクは興奮してた。鮮血に染まった彼女がまるで、ピジョン・ブラッドのように…月明かりの下、キラキラと真っ赤に輝いて見えた」
「……………」
「──だから、そのまま、バルコニーから下の薔薇園に向かって突き落としたんだ。群れて咲く真紅の薔薇に突き刺さった彼女は…この上なく美しかったよ」
「薔薇園…」
「けれど、それと同時に急速にどうでも良くなった。なんだろうね。あの、砂を噛みしめるような虚しさは──まあ、もっとも、それくらいじゃ、ヴァンパイアは死にはしないんだけどさ」
「でも、実際に…彼女は死んだんだよね?」
「んふ。そうだよ。アヤトくんではなく、最終的にカナトくんに見つかって燃やされた」
「──心臓も?」
「んふ。カナトくんに聞いたの?」
「っ…………」
「あの人はいろんな人に"愛されて"たからねえ。胸の中にあるべきものは空っぽだったって」
「(空っぽ…)」
「誰かが抉って、食べちゃったのかもね。一時期はハンターが持ち去ったという話もあったけどさ」
「ハンター?」
「ヴァンパイアを狩る奴らの事さ」
「…そうなんだ」
《──アタシの心臓を持ち出したのはリヒターよ。息も絶え絶えの状態で、リヒターに使い魔を飛ばしたの。あの状況で信用できるのはあの人だけだった。》
「(…あの人も利用したんだね。)」
《人聞きの悪いこと言わないで。ライトにもカナトにも…アヤトにも良くしてあげたのに。》
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