第16章 呪われた花嫁
「(そういえばあの夢、不思議だったな。夢なのに会話は成立してたし、夢の中なのに呪いも掛けられた。ますます彼の正体が分からない…。)」
制服に着替え、身なりを整える為に等身大の鏡の前に立つ。
「はぁ…あの頃がいかに安全で平和な生活だったか、今を以て身に染みる」
ライトくん達と知り合う前の日常に戻りたい。何度そう願ったことか。不可能な事を頭の隅で考えながらもう一度、溜息を吐いた。
「──はぁ。」
「鏡を見て溜め息を吐くなんて、キミはどこぞやのナルシストみたいだねえ」
「っ!い、いきなり現れないで!」
鏡に映ったライトくんに驚いて後ろを振り向く。彼は大して悪びれもせず、笑っている。
「んふ。ごめんごめん。別に脅かすつもりはなかったんだけどねえ。時間になったのに、キミが全然降りて来ないからさ」
「今行くところだったの…」
「そー。でも、うっかり自分に見とれちゃったのかな?」
「違うよ。身嗜みを整えてたの。別に自分にうっとりしてたわけじゃ…」
「まあまあ、隠さないでいいよ。ボクもお花ちゃんは最高に魅力的だと思うし。それに…今日も可愛いね、ボクのお花ちゃんは」
「ライトくんのじゃない」
ふんっと顔を逸らす。ライトくんが小さくクスッと笑ったのが、なんだか小馬鹿にしたような笑いに聞こえて、イラッとした。
「ボクが最終チェックしてあげる。…そのまま、鏡を見てて」
近付いてきたライトくんが強引に私を鏡の前に向かせる。
「っ……!な、何するの!?」
「言ったでしょ?お花ちゃんが他の男とエッチなことしてないか、チェックするんだよ」
「そんなことしてない!」
「んふ。どうだかね。この屋敷には野獣みたいな男共がゴロゴロいるんだよ?」
「……………」
「それに、本当にしてないって言うなら、ボクに見られても構わないでしょ?」
「嫌に決まってるでしょ!」
「えー?どうして?」
「そ、そんなの………に決まってる、から…」
「なーに?聞こえないよ。ボクに聞こえるようにもっと大きな声で言ってくれなきゃ」
「だ、だから!恥ずかしいんだってば…!」
「へえ。恥ずかしいんだ。なおのこと見たくなってきちゃった。お花ちゃんはツミな子だね」
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