第15章 生きる意味
【地下牢】
「なんなの、ここ…」
ライトくんから地下室を掃除してって頼まれてやって来たのはいいが、そこは牢獄だった。煉瓦の壁に正面には名の通りの牢獄。囚人を逃がせまいと、鉄格子まで付いている。
「……っ……なんでこんな場所が……っていうか、掃除させるなんてやっぱり何か企んでるに決まってる」
その時、何者かの気配を感じ、周囲を見回すが、誰もいなかった。
「(気のせい、かな…)」
「──ボクはこっちだよ。」
「っ………!!」
「おっと。危ない危ない。そっちにはトゲトゲがついた拷問器具があるよ。倒れると串刺しだ。フフフッ」
「ライトくん…」
「もっとも、ボクは串刺しのキミでも愛せると思うけどねえ?」
「っ…ふ、ふざけないで。ここ、掃除するから…ど、退いて!」
「声が震えてるよ?本当は怖いクセに」
「そ、それは怖いでしょ!こんな…そもそも、どうして家の中にこんな場所…」
「ん?家に地下牢があるのって、普通じゃないの?」
「普通じゃないよ…」
「そういうもの?ボクらにとっては当たり前のものなんだけどね」
「当たり前って…」
「イロイロと必要でしょ?獲物が逃げないようにしたりさ…んふ」
「(獲物を捕らえる為の牢獄…)」
「それにね、ボクら一族は必ずしも仲がいいとは言い難いから」
「!」
「こういうのを作って常に脅しとかないと。あとは折檻の時に使用するとかね」
「……………」
「──ボクも…入れられたこと、あるよ」
「え?」
「耐え難い拷問を…受けたものさ」
「っ…………」
「んふ。そんな顔して。なあに、お花ちゃん。ボクに同情してくれたのかな?」
「それは…」
どう言葉を返していいのか分からず、私はライトくんから気まずそうに視線を逸らす。
「んふ。お花ちゃんは本当にウソがつけないね」
そう笑ったライトくんの指先が、私の目尻に優しく触れる。いつもなら振り払うところだが、牢獄に入れられたという話を聞いたせいで、振り払うのを躊躇う。
「でも、苦痛も時として快楽となることもあるんだよ。お馬鹿さんだね。フフッ」
「(同情して損した…!)」
ライトくんの手を振り払う。
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