第14章 愛しの"アノ人"
「だ、れか…ハァ…ッ…助け…」
「胸が痛いの?ボクが血を吸ったから?」
「痛い…ハッ…ハァ…う…ぐっ…」
「こっち見て」
「っ!」
顎を掴まれ、無理やりライトくんの方に顔を向けさせられる。
「ボクが目の前にいるのに、どうしてボク以外に助けを求めるの?キミが助けを求めていいのはこのボクだけだよ」
「だっ…て…ハァ…助けて…くれない…でしょ…」
「助けてあげるよ。キミがボクを好きって言って、ずっとボクの傍にいるって約束できるなら、お花ちゃんのこと助けてあげる」
「好きじゃ、ないから…ライトくんの傍に…いるなんて…約束は…ハァ…できない…」
涙を潤ませた苦痛の表情で言えば、ライトくんの目がスッと冷たくなり、不機嫌そうに言う。
「ふぅん…じゃあ助けてあげない。そうやってずっと胸の痛みに堪えてればいいよ。キミのそういう顔を見ながら吸血するのも悪くない」
「っ…嫌い…ライトくん…なんて…」
「早くボクに絆されてよ、お花ちゃん。そうしたら今以上にもっともっと、たくさん愛してたげるよ」
「(この胸の痛みは呪いのせい?それともライトくんと関わって、血を吸われたせい?怖い…彼にこれ以上関わるのが…血を吸われるのが…怖くて仕方ない。)」
「大好きだよお花ちゃん。ボクと一緒にどこまでも狂い堕ちようね──」
そう言って笑ったライトくんがまた私にキバを突き立てる。
───その夜は長く、永遠に続くかのようだった。
初めての行為に私はショックを受け、そして彼が確かにヴァンパイアであることをまざまざと知らされた。
私の血を吸って力を漲らせる夜闇の住人。
そんな彼が口走った"貴女"とは一体誰?
彼は浮かれた声で、愛していると言っていた。
所詮私は彼にとってはただのエサ。それか暇潰しの遊び相手だ。愛してるなんて嘘ばかり。ライトくんは嘘つきだ…。
「(昔読んだ絵本を思い出した。女の子と男の子は喧嘩ばかりしてたけど、お互いを大切に思っていた。そしてそこにはちゃんと『愛』があった。)」
私が欲しいのはこんな愛じゃない
知りたいのは…上辺だけの愛じゃない
絵本の二人のような
幸せに溢れた、素敵な愛のカタチだ…。
next…