第14章 愛しの"アノ人"
【教室】
「(はぁ…逃げ出そうとしても必ず兄弟の誰かに見つかっちゃう。)」
「(元はと言えば、アヤトくんが一緒に住めばいいなんて言ったせいで…)」
「(あぁ…私、元の生活に戻りたい。ライトくん達と出会う前の…日常に。)」
そうすれば魔族と関わる事もなくなるのに。どうしてライトくんの目に留まってしまったんだろう。私なんて、ライトくんの興味を引くような存在でもないのに。
「(はぁ…携帯はスバルくんに壊されたままだし、買いに行く暇もない…屋敷の電話を使おうとしても兄弟の誰かに止められる。)」
チャイムが鳴り、授業終了を告げる。
「(休み時間か…少し、夜空でも見て、頭、冷やそうかな。ああ、なんだかずっと青空を見てないな。最近は夜空ばっかりで…)」
教室を出た私は屋上へと向かった。
「───ん?」
屋上の扉を開けると誰かの声が聞こえた。
「──愛しています。いつまでも、いつまでも、いつまでも…貴女が、望むと望まざるとに関わらず。」
「(ライトくん!?一体…誰と話してるの?)」
「一瞬たりとも…貴女のことを忘れたことなんてない。貴女の声、貴女の匂い…全て…覚えてる…はぁ…」
「(っ…ライトくん…?)」
「……………」
じっとライトくんを見ていると、突然目線がこちらに向いた。
「っ………!?」
「──っ…おい、そこにいるヤツ…無粋な立ち聞きをしていると噛み殺されても知らないぞ」
「え!?」
「お前だよ。」
「キャッ!!」
一瞬で目の前に移動したライトくんが私の首を押さえつける。
「っ………!?お花ちゃん?」
「(の、喉…くるし…押さえつけられてる…!)」
「…まさか、悪趣味な覗き魔がお花ちゃんだったとは…少し、失望したよ」
「ご、ごめんなさい…立ち聞きするつもりはなかったんだけど」
「んふ…本当かなあ?」
「ほ、本当だよ…たまたま、外の空気を吸いに来ただけで…」
「そう。でも…聞こえちゃったでしょ?イロイロと、さ。」
「少し聞こえたけど…」
「あっは。やっぱり聞いてたんじゃな〜い。悪い子だね」
「だ、だから少しだけ…」
この状況に嫌な予感を覚え、心臓がドクンドクンと脈打つ。
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