第14章 愛しの"アノ人"
【リビング】
「(昨日の保健室では散々ライトくんに身体中触られるし、余計に具合悪くなって最悪だったけど…休んだら落ち着いたし良かった。)」
「──ねえ、お花ちゃん。」
「(下界の生活にはもう慣れたけど、やっぱりここで暮らすようになってから、魔族の影響を必要以上に受けてる気がする…)」
「──お花ちゃーーん?」
「(最近なんだか注意力が下がってるし、ボーッとすることも多い…)」
「──お花ちゃんってばー」
「(とにかく本当にこの屋敷から逃げ出さないと…色々まずいことになる。)」
「──お花ちゃん?」
「………っ!?ら、ライトくん!?」
耳元で囁かれ、私は驚いてライトくんを見る。
「どうしたの?ボーッとしちゃって。さっきからずっと声掛けてたのに」
「あ、気づかなかった…」
「さては…ボク以外の誰かのことを考えてたんだねー?浮気モノ〜」
「ち、違うよ!!」
「チッチッチ。嘘はいけないよ?ボクにはね、分かっちゃうんだから。さあ、こっちにおいで。」
「っ………!」
「お花ちゃんの手、小さいねぇ」
「な、何するのっ!?」
ライトくんに抱き寄せられて手を握られ、振り払う。
「んふ。ちょっと抱き寄せただけでそんな反応するなんて…今すぐここで押し倒して、キミの純潔を奪いたいくらい」
「(っ……!な、なぜか喜ばれてる!?)」
「全く、お花ちゃんは油断も隙もないね」
意外にもライトくんがスッと離れる。ただし手は握られたまま。
「今度キミが想っている男の前で恥ずかしくて死にたくなるようなことしてあげるよ」
「だ、だから…そういうのじゃないよ。ただボーッとしてただけで」
「ふーん。まあいいや。理由はどうであれ、ボクが声を掛けたのに反応してくれなかったのは確かだし。お仕置きしなくちゃあねえ?んふ!」
手を繋がれたまま、リビングを出たライトくんが連れて来たのは…
「お仕置きで…薔薇園?」
「そうだよ。ボクと一緒に、薔薇を愛でること。これが、お仕置きさ?」
「(…なんか、怪しいな。けど…赤い薔薇か。情熱を表す色で綺麗だけど、ちょっと赤すぎて苦手かも。)」
血で染められたような赤を見て、体を震わせた。
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