第2章 悪戯好きのトラブルメーカー(√)
「アヤトくん…」
「ハッ…オレか…当然だな?」
「(…思わずアヤトくんを選んじゃった。よりにもよって問題児のトラブルメーカー…)」
「──で、これからどうするんだ?」
「どうするもこうするも、決まってんだろ?いただくんだよ、コイツの血をよ」
「っ………!」
「ほどほどにしとけよ。殺すのはNGだからな」
「あぁ?んでだよ!!」
「何でもなにもコイツの血は…、……いや、何でもない。とにかく面倒だから殺すなよ」
「…意味わかんねー。何でこんなチンケな人間の小娘を殺しちゃいけねーんだよ!」
「いひゃっ!?」
シュウさんに殺す事を止められたアヤトくんは怒りの矛先をぶつけるように、私の頬をムギュッと摘みながら言った。
突然の仕打ちに驚いてアヤトくんを見上げる。
「どうして摘むの!やめてよ!」
「オマエを殺すのがダメなんだから仕方ねえだろうが」
「(ホント理不尽!!というか私を殺したら神様の逆鱗に触れて魔界が焼け野原になるからね!?)」
魔族が天使を殺すことは重罪であり、神の逆鱗に触れた瞬間、全面戦争が無制限に行われる。それを知ってか知らずか、アヤトくんのオレ様っぷりに呆れつつも小さな溜息を吐く。
「(私の頬、いつか絶対弛む。)」
摘まれた頬を擦りながらアヤトくんを睨んだ。
「とにかく、そういうわけだから。死なない程度でな」
「くっそ、気に入らねえなあ。でもまあ、いい。オマエ、オレを選んだのを幸運に思えよ?」
「(悪運にしか思えない…)」
結局その日から私は逆巻家で暮らすことになった。まだ家具も揃っていない部屋で私はすぐにベッドに潜り込み、眠りについた。
◇◆◇
次の日───。
「昨日は散々な目に遭った…」
授業が終わり、帰りの支度をする。唯一安心だったのは、三つ子と別のクラスなこと。これで彼らと同じクラスだったら学校生活まで悪夢だった。
「はぁ…夢じゃないなんて…」
教科書やノートを鞄に詰め込む。
「そろそろ帰らないと…」
そう言ってもう何十分経ったのか。クラスメイト達は全員帰ってしまい、教室には私だけが残っていた。
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