第1章 PROLOGUE-はじまり-
『憐れな天使の子よ』
『私の声が聞こえるかい?』
"貴方は誰…?"
『私は君の幸せを願う者』
『そして──試す者でもある』
夢の中で【誰か】が私に語りかけてきた。
『さて、憐れな天使の子よ』
『今から君の心臓に死の刻印を呪符する。その呪いは強力で、天使の力を以てしても解く事はできない』
"え……?"
その声の持ち主の突然の話に頭が真っ白になった直後、ドクンッと心臓が強く鼓動を打った。
『だが一つだけ呪いを解く方法がある。それは…特別な者から与えられる愛だ』
"愛?"
『君が運命の相手と出逢い、その者と共に永遠の愛を手に入れた時、君にかけられた忌まわしい呪いは消える』
"どうして私に呪いをかけるの?"
『言っただろう。試す者でもあると。君と君の選んだ運命の相手に課せられた試練だよ』
"もし…呪いが解けなかったら…?"
『呪いは少しずつ君の心臓を蝕み、その身体に耐え難い痛みと苦しみを与える。君が運命の相手を見つけられなければ、君に訪れるのは死だ』
"っ………!!"
"死"──。たった一言なのに、その言葉の重みが私にずしりとのしかかった。
『死にたくないなら呪いを解くと良い』
『運命の相手を見つけて、その者から与えられる愛を手に入れ、永遠の愛が証明されれば、必ず呪いは解ける』
"そんな…簡単に…"
突然聞かされた呪いの話もまだ自分の中で整理がついていないのに、呪いを解くための運命の相手を見つけろと言われても余計に混乱する。
"そもそも…運命の相手に出逢えるかもわからないのに…"
『憐れな天使の子よ』
『この世には色々な愛のカタチが存在する。しかし愛は無償ではもらえない。だからこそ、人は何かしらの犠牲を払い、愛を手に入れる』
『君も運命の相手と出逢えば、互いに惹かれ合い、自ずと愛を求めるようになるだろう』
『果たして君が何を犠牲にして、運命の相手からの愛を求めるのか、楽しみにしているよ』
"ちょ、ちょっと待って…!"
『その者と共に呪いを解き、最後に君達が辿り着くのは、幸せか。それとも───……』
私の呼び止める声など聞いておらず、その【誰か】は、少し期待を含んだ声で愉しげに笑った…。
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