第1章 PROLOGUE-はじまり-
「お花ちゃんの部屋はビッチちゃんの隣だよ♪家具とかはお花ちゃん好みの物にしてあげるから安心してね」
「…何も安心じゃない。家具とは別にどうでもいいし、誰も私の話を聞いてくれない」
「オマエの話なんて聞くだけ無駄だろ。もうここに住むのは決まってんだし。いつまでもウジウジ言ってんならオレ様が頭から食っちまうぞ」
「もうウジウジ言いません…!」
「学校でも家でも君に会えるなんて嬉しいです。ね、テディ…これでお菓子をたくさん作ってもらえるね」
「(私は恐怖しかないよ…)」
「作ってくれますよね…?」
「も、もちろんですとも!」
私の上から退いたカナトくんがテディに話しかけた後、冷たい眼差しを向けた。私が怯えながら承諾するとカナトくんは満足そうに笑った。
「(本当に最悪な日だ…)」
「──僕を選ばなかったら。」
ギクッ
「テディ…ね?アイツをふたりで八つ裂きにしよう?」
「(八つ裂きは困る!!)」
「面白くなってきたぜ…当然、選ぶのはこのオレ様だろ?決まってるよな?」
「(何も面白くない。)」
「なんでもいい。とっととこの茶番を終わらせてくれ」
「お花ちゃーん?このボクを選ばないと…後で絶対後悔することになるよ?」
「(もう既に後悔してるよ。)」
はぁ…何でこんなことになるの…
逆巻兄弟とこれから暮らすなんて。
「で?オマエは誰を選ぶんだよ?」
「それは…」
私は逆巻兄弟を一人ずつ見る。
「(…誰を選んでも絶対無事じゃないよね。)」
ヴァンパイアの存在は知っていた。だけどまさかアヤトくん達がそうだったなんて。
「(魔族と関わらないように注意していたはずなのに…)」
関わってしまった、彼らに。
「(せめて…"繋がり"だけは持たないようにしないと。私の正体を知られるわけにはいかない。)」
これから先の不安を考えると、小さく身体が震えた。
「……………」
この中から誰かを選び、その人にだけ血を吸われる。
「(もう…逃げられない。)」
迷いに迷った結果
私が血を捧げる相手として
一人、選んだのは────。
next…