第12章 誤解とすれ違いの誕生日(❤︎)
「いっ…たい…」
「……くそっ……オマエなんか知るか!」
一瞬、まずいというような顔をしたアヤトくんだったがどこか辛そうな顔をして、走って行ってしまった。
「っ、ふっうぅ……」
アヤトくんに私の気持ちを否定され、ポロポロと涙が溢れた。私はアヤトくんが好き。大好き。アヤトくんが誰かに触れたり、触れられたりするのがイヤ。私以外に目を奪われるのもイヤ。こんな独占欲が強い私でもアヤトくんは受け入れてくれた。
「(でも…アヤトくんのあの言葉が、ずっと心に残ってて、消えてくれない。)」
ゆっくり立ち上がり、涙を拭う。
「(ケーキの材料も揃えたけど、作ったところで無駄になっちゃうかもな…)」
はぁ、と溜息が多くなる。
「…どうすればいいんだろ。もう正直に話した方がいいとは思うけど…これじゃあ、話さえまともに聞いてもらえない」
ふと薬指に目を向けた。
「(あ…薬指の傷が…消えかけてる…)」
『消えそうになったら、またつけてやる。何度でも、……永遠に消えないように、な。』
「…指輪の代わりって言ったのに。アヤトくん…このままじゃ、消えちゃうよ…」
◇◆◇
【キッチン】
「ぐずぐず考えるのやめ!ケーキを作って気分をあげるのが一番いいしね。これ持って行って仲直りしよ」
既にスポンジに生クリームが塗られた状態のケーキが目の前にある。
「あとはイチゴを飾れば…できた!」
ショートケーキの完成だ。手作りの割に見栄えも味も文句はなかった。あとは箱に入れて時間になったらこのケーキを持ってアヤトくんのところに行こう。
「(ちゃんと謝って…誤解だってことを説明しなくちゃ。)」
◇◆◇
【廊下】
「ちゃんと話せば、アヤトくんだってわかってくれるはず…だよね?」
「あれれ〜?お花ちゃんじゃな〜い。また会ったね」
「ライトくん!?」
「こ・ん・ば・ん・は♪」
今日でライトくんと会うの何回目だろう…と遭遇の数に驚いて彼を見る。
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