第12章 誤解とすれ違いの誕生日(❤︎)
「お花ちゃん♪」
「…ライトくん」
「んふっ。あからさまに顔をしかめたねぇ。」
自分の部屋に戻る途中の廊下で最悪にもライトくんに遭遇してしまった。思わず顔をしかめた私を見て気分を悪くする訳でもなく、ライトくんは笑っている。
「ねぇお花ちゃん」
「何?」
「アヤトくんと一緒にいられて幸せ?」
そう聞かれて私は微笑む。
「すごく幸せだよ」
「そっか。あーあ、お花ちゃんがまさかアヤトくんのモノになっちゃうなんて残念だなー。本当ならボクがお花ちゃんを独り占めしたかったのに」
「ライトくんはまたそういうことを…」
「今からでも遅くないよ?ボクに乗り換えちゃいなよ。たーっくさん気持ちヨクしてあげるよ?」
「ごめんね。私、アヤトくんじゃなきゃダメなの。だからライトくんに乗り換えることは絶対にないよ」
「絶対にかぁ。それは残念」
肩を竦めてライトくんは残念そうに笑う。
「じゃあライトくん。私もう部屋に戻るね」
ライトくんに別れを告げ、私は部屋に戻って行く。その後ろ姿をライトくんがじっと見つめていたことに気付かず…。
「本当にアヤト君じゃなきゃダメって顔だったな〜。まあ、でも…いつまでも、その幸せそうな顔でいられるといいけど…ね?」
んふっと笑い、ライトはその場から立ち去った。
◇◆◇
【自室】
「あれ…ない。確かこの机の上に置いておいたと思ったのに…」
ベッドで気持ち良さそうに寝ているアヤトくんを起こすのも悪いと思ったが、一応聞いてみることにした。
「ねえアヤトくん。ごめん、ちょっと起きて?」
「んー……」
「アヤトくんってば」
「……っなんだよ、うるせぇなぁ」
「(見事なまでに不機嫌…)」
「何回も呼ぶなっての!」
「だからごめんって謝ったじゃない」
「人がせっかくいい気持ちで昼寝してたのに…」
「(一応私のベッドなんですけど…)」
寝ているところを邪魔されたアヤトくんは少し不機嫌そうに上体を起こした。
「で?わざわざオレのこと起こして、何の用だよ?」
「ここにあった私の本、知らない?」
「本?」
「何冊か置いてあったと思うんだけど…」
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