第11章 ヴァンパイアの花嫁
【庭園】
「ねえ、アヤトくん…」
「あ?」
「本当に広間に行かなくていいの?」
「いいっつーの。堅っ苦しいのは苦手なんだよ」
「それは知ってるけど…みんな待っててくれてるのに怒られちゃわない?」
「バーカ。オレ様に文句言えるヤツなんて、もういねぇんだよ。なんたって、最強のヴァンパイア様だからな」
花弁が風で舞う中、純白のドレスを身に纏った私は白のタキシードを着たアヤトくんに後ろから抱きしめられながら寝転がっていた。
「…アリガトな」
「何が?」
「オレが最強のヴァンパイアになる為に…チチナシの血飲むこと、許してくれただろ?」
「あぁ…うん。覚醒したユイちゃんの血はアヤトくん達のお母さんの心臓だから力を得るのには仕方ないよ。大丈夫。怒ってないよ」
「……………」
アヤトくんは無言でギュッと抱きしめる。
「それよりもアヤトくん。私の天使の力はもういらないの?」
「…ひとまず諦める。今はオマエが傍にいてくれるからな」
「そっか……」
するとアヤトくんの頭が私の胸に乗る。
「メグル、いつものヤツ、やれよ」
「え?」
「髪、撫でるヤツ」
「うん」
少し固い髪を優しく撫でる。
「……………」
「(目瞑ってる。心臓の音でも聞いてるのかな?)」
「そのドレス」
「え?」
「…すげぇ似合ってんじゃん」
「!」
「下ろした髪もいつもと違ってすげぇ可愛い」
「あ、ありがとう…」
「ククッ。すーぐ照れんのな」
「…そうやってからかう」
恥ずかしくて頬を赤くする私を見てアヤトくんは可笑しそうに笑う。
「アヤトくんも…似合ってるよ」
「まぁな。オレ様に似合わない服なんてねぇだろ」
「(相変わらず凄い自信…)」
「なんだよ、更に惚れ直したか?」
「うん」
「即答かよ」
フハッとアヤトくんは小さく吹き出す。
「…ねぇアヤトくん」
「んー?」
「ずっと私の傍にいてくれる?」
「そう聞くって事は、オレ様がいつかオマエから離れて行くって思ってんのか?」
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