第10章 歪な関係で私達は
【通学路】
「(ユイちゃんと帰ろうと思ったけど先生に頼まれ事されてるなら仕方ないよね…)」
下界に来てもう随分と月日が経った。初めは天界と何もかもが違くて戸惑う事が多かったが、今では学校も楽しくて、友達もたくさんできた。ただ…帰りが真夜中になっちゃうのは怖くて、未だに慣れない。
「(おばけも怖いけど、変質者とか出てきても力で勝てないし…)」
大抵はアヤトくんが一緒なのだが、今日みたいにたまーにふらっとどこか行っちゃう時もある。
「(あれ?)」
「……………」
「(……あの人、こっちを見てる?)」
前方に佇んでいる男性が私をじっと見ている。もちろん知り合いではないし、変質者って感じもしない。
「……エル。」
「え……?」
その人はこちらに近付き、私の前で立ち止まった。
「あ、あの……?」
「ミカエル……!!」
「っ………!」
ガシッと腕を掴まれ、一気に緊張が走る。
「なっ……は、放してください……!」
「貴様さえいなければコーデリアは…!!」
「い、いたっ……!」
すごい力…!
まるで人間じゃないような…
「穢らわしい天使の分際で…!!」
「さ、さっきから何を言って…」
ズクッ……
「うぐっ……!?」
「!」
ズキンッといつもの胸の痛みが襲う。
「ッ……は、はぁ……ッ……う、ぁ……っ」
胸を押さえ、激痛で顔を歪める。
「急にどうし…あぁ、そうか。貴様、呪われているんだったな」
「!?」
「胸が痛むのだろう?」
「っ……な、んで……」
「何故呪われているのを知っているか?…フッ、答えてやっても良いが、簡単に教えてはつまらん」
「え……?」
「だがヒントだけはやろう。貴様に呪いを掛けた相手は相当な力を持つ者だ。だから"あの人"が掛けた呪いは簡単には解けんぞ。必ず呪いは貴様自身を蝕み、死に至らしめる」
「(まさかこの人…!?)」
「……っ……」
口の中に鋭い牙が見え、この人がヴァンパイアだと知る。そして私の血を吸おうとしているのだ。
「やっ!やめて…!」
「恨むなら自分の母親を恨め。貴様が呪われたのはあの女のせいだからな」
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