第8章 素直になれない天使と吸血鬼は
『……っ……は……ぁ……ア……』
『あーぁ…汚れちゃったぁ。この服、結構気に入ってたのに。母さんの血でびしょびしょだよ。……ん。』
着ている白い服には真っ赤な血が付着している。アヤトは手についたコーデリアの血を舐め取った。
『……ん……ふ……っ。母さんの血……あまい……おいしいよ……』
コーデリアの服も血まみれに汚れており、刺した本人であるアヤトを苦痛の表情で睨みつけている。
『ねぇ、もっとちょうだい?飲み尽くしても……いいよね?』
『……っ……』
『だって母さんは……もうすぐ死ぬんだからさ……』
『────!』
『母さん……』
「……っ……。はぁ……そろそろ、頃合いだな。早く帰って来い、メグル……」
◇◆◇
「(日直の仕事してたら、すっかり遅くなっちゃった。って言っても、どうせ帰るのは真夜中だから…大差ないんだけど。)」
逆巻の屋敷に着いた途端、後ろから誰かに抱きしめられた。
「………!?」
「おっせぇよ、オマエ」
「あ、アヤトくん!?」
今日は日直の仕事で遅くなるからとアヤトくんには先に帰ってもらっていたが…
「どうしたの?こんなところで……」
「オマエ待ってたに決まってんだろ」
「え……」
するとアヤトくんは私の匂いを嗅ぐ。
「な、何……?」
「やっぱ…血の匂いが変わってんな」
「!」
「今までと比べてすげぇ甘ったるい匂いだぜ。ククッ…どういう心境の変化だ?」
「(匂い袋が効いてない?そもそもアヤトくんには途中から天使の血の匂いはバレてたし…効果が弱まってる?)」
「なぁメグル。オマエ、オレのこと好きか?」
「っ……な、何で今そんなこと聞くの…?」
「いいから答えろ」
「……き、嫌いではなくなった、よ……」
「へェ……?じゃあ少しずつオレに惹かれてるってことだな?」
「……そ、それは……」
「だから血の匂いが変わったのか。やっぱりオマエもうオレに堕ちてんだろ」
「!」
「じゃなきゃこんな甘ったるい匂い、させねぇもんな。ククッ。早くオレが好きって言っちまえよ」
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