第1章 、
外からは矢張り元気な蝉の鳴き声が聞こえる。夏らしいコーデにしようと決め、選んだのはノースリーブとショートパンツのセットアップ。胸下まである髪の毛は後ろの高い位置でひとつに結んだ。
「準備できた〜?」
そう言ってやってきた悟は、またソーダ味の棒アイスを食べていた。ベッドに座る悟へ「絶対零さないでよ」と釘を差し、日焼け止めを塗った。
アイスを食べ終わった悟は近くに寄ってきて、私の髪の毛に触れる。 「、髪伸びたよな」 何故か早まる心臓を抑えるように、静かに深呼吸をして平然を装う。
「準備できたよ!行こう!」
二人は電車に乗ってショッピングモールへ向かった。「とりあえず腹ごしらえだろ〜」という悟に、先程までアイスを食べていたような、と思いつつもカフェに入る。
サラダとスープとパスタ、食後のデザートまでしっかり食べた。他愛もない話をして楽しい時間を過ごした。
「で、買いたいものって何だったの?」「あ〜あれ適当に言った。でもたまにはこういうの良くね?」まぁ、楽しいしいっか!と他のお店を色々回ることにした。
それから何店舗か回った後に、少し広めの雑貨屋さんに入った。悟はおもちゃコーナーで実用性の全く無い品々を買おうか悩んでいる様子だ。
「あっち側行ってくるね、」と私が向かった先は文房具のコーナーだった。新しいボールペンを買おうと、様々な種類を試し書きする。
「 あの、 今ひとり? 」
急に知らない男の人から声をかけられた。大学生くらいだろうか。「私友達と来てて、」と言うと「僕も友達といるから、良ければ一緒にパフェでも食べに行かない?」と随分積極的なお誘いだった。
「あの、えっと、」断りたいのだが上手く言葉が出てこない私の声を遮って、その男は話続けた。
「この上の階にあるパフェ専門店すっごく美味しいから、良かったらご馳走してあげるよ?」私は悟が居るであろうおもちゃコーナーに助けを求めるように視線を向ける。死角から出てきた悟と目が会うと、彼は直ぐに来てくれた。
「こいつに何の用?」
駆けつけてきた悟は、声を掛けてきた男を見下しながら、怒っているような表情をしていた。「や、何もないよ、じゃあね〜」そう言って足早に消える男が見えなくなるまで、サングラス越しに睨んでいるのがわかった。