第1章 、
身体全体に痛みが走る。ああ、私は結局死ななかったのか。こんな状況でも蝉は煩いくらいに鳴いている。誰かが手を握ってくれているようだ。
目を開けると、高専の医務室と蒼い瞳が映し出された。
「悟、観てくれてたの?...ありがとう。」昨日の事があって気まずさばかり募るが、とりあえずお礼を伝える。
「硝子が治療してくれた。」それだけ言われると握られている手に、ぎゅっと強く力が込められた。
「もう大丈夫だよ、心配かけてごめんね」
そう言って悟の手を離し、痛い身体をなんとか起こした。
「何で戦った?なら自分が太刀打ちできる相手かどうか位判断付くだろ?どうして無理してまで祓ったんだよ、逃げる事は出来ただろ?」勢い良く怒鳴られる。
「ごめん、解ってた。けど戦った。意味は特に無い。でも、もしあそこで死んでたらそれも運命だよ。」は力無く笑った。
再び私の手を握る悟。普段の彼からは到底考えられないような、弱々しい声でこう呟いた。
「お前が居なくなったら俺が困るんだよ。
俺、の事好き、だから。」
驚く私は目を見開いて悟の蒼い瞳を見つめる。
冗談、では無さそうだ。
「一緒に居る時は俺が守る。
でも一緒に居れるとは限らないだろ?
...だから無理しないって約束してくれないか」
色々な事が頭を巡る。悟が私を好き?状況の整理が追いつかないままで居た。
「心配かけて本当にごめんなさい。これからは無理しないようにする。でもね、」
一旦深呼吸をして心を落ち着かせた。
「悟の気持ちには応えられないよ、 ごめん。」
少しの間、沈黙の時間が流れた。「俺の方こそごめん。今のは忘れてくれ」そう言って悟は医務室を出ていった。