第9章 交淡如水 【冨岡義勇】 1
担当4カ月目の主な出来事
あやは珍しく鬼殺の任務に就いた。
鬼の血気術の弱点がなかなか見つけられず、少しずつ追い詰められたその時に、義勇が助けに来た。
あやの怪我の止血をしてくれた。止血をしながら少し話をすると、別に隠していたわけではないが、あやも水の呼吸の使い手だったこと、やっと全集中の常中ができるようになった程度の強さであることを知られた。
「弱いにも程がある。もっと鍛えろ。」と、珍しく怒られ、時々義勇に稽古を付けてもらうことになった。
担当5カ月~7か月目の主な出来事
義勇から「鍛えてやるから来い」と呼ばれ、あやは驚くほど厳しい稽古を付けてもらった。
このまま死ぬかもしれないと3回思ったし、義勇の担当になったことを10回以上後悔した。
あやは型の稽古の途中に疲労で倒れた。目が覚めると稽古場の端の方で義勇の羽織を枕にしていた。ふと頭に違和感があったので上を見ると、義勇が横に座っており、あやの髪をさらさらと触っていた。
「動けるか?」と訊かれ、
「動けません。」と正直に答える。
「仕方ない。」と体を抱えられ壁にもたれるように座らされた。そしておにぎりを食べさせてくれた。
(義勇殿。優しい。)と思ったのも束の間で、食べ終わると無理矢理立たされてまた稽古を再開された。
あやはもう本当に体のどこも動かす力が無くなり、稽古の途中で眠ってしまった。
気が付いた時には辺りは真っ暗で、あやはどうやら義勇の屋敷へ運ばれ、布団に寝ていた。隊服の上着だけ脱がされており、シャツだけになっていた。
背中が温かいと思ったら、義勇が背中合わせで眠っていた。この状況に思考がついて行かなかったが、義勇の体温が心地よく、考えているうちにまた眠ってしまった。
そして、この地獄のような稽古が、三カ月間、月に十日づつ行われた。
義勇からの謎行動その弐。後日しのぶに稽古の様子を聞かれたときに、背中合わせで寝たことは、義勇がしのぶに激怒されそうで報告できなかった。2回目の稽古からは自分の布団を持ち込んだ。